神様、こいつだけは私の手で



大きな箱に愛しい子供の死体をつめた。



「ガイ。俺はやっぱりガイと一緒に逃げるなんてできないよ」

手を振り払われる。どうして。

「この世界が好きなんだ。ジェイドがいる、みんながいる、この世界が好きなんだ」

ジェイドのためなのか?俺にはお前だけなのに。

「俺は瘴気を中和するよ。ありがとな、ガイ。俺を生かそうとしてくれて」

じゃあ俺と一緒に生きてくれよ。なんで。

「でも、俺はジェイドにもガイ達にも青空の下で笑っていて欲しいんだ。」

なんでなんでなんで。

「だから、俺はお前と一緒にはいけない」


嫌だ
いやだ
イヤだ

世界にお前を殺されるくらいなら。
ジェイドにお前を殺されるくらいなら。

いっそ俺が――




赤に崩れ落ちた子供を抱きしめるとまだ温かかった。弱弱しい呼吸を感じる。
ああ、このままでは逃げてしまうかもしれない。誰にも奪われないように箱にしまっておかなくては。



これで愛しい子供は箱の中。
ルーク、ごめんな。
でも俺にはお前だけなんだから、お前も俺だけじゃなきゃおかしいだろう?
だいじょうぶだよ。俺が一生そばにいて愛してあげるから。

なぁ、ルーク。



箱はいつしか軽くなっていた。いつまでたっても死臭も腐臭もしなかった。
だけど狂った男は気付かない。
絶望も希望も逃がさないようパンドラの箱は閉められたまま。
そして男は今日も箱に愛をささやくのだ。




箱の中身など、とうに消えてしまっているのに!